kigi's Book Diary

本の感想ブログ

「見えないグリーン」 ジョン・スラデック

鮎川哲也氏絶賛ということで読んでみたのですが、
これは本当に面白かった。

巻末の解説で、こんなこと↓が書いてあったら読まないわけにはいかないですよね。
「近頃めずらしい純粋の本格謎解き小説であり、待望久しい充実した作品」
「最後まで五里霧中をさまよわされ、読了してから作者の見事なペテンに気付いた時の楽しさ」

1977年の作品で1985年出版、2007年新装版になっていて、
新装版の解説は法月綸太郎氏



事件はいかにもパズルミステリー的です。

ミステリー好きの集まり「素人探偵七人会」。
その会合が35年ぶりに開かれることになった時、
かつてのメンバーがひとりづつ殺されていく。
さらにメンバーひとりひとりに色に関係するメッセージが送りつけられる。

単なる説明だと思って読み飛ばした文章が、最後になって実は重要な伏線だったとわかるという、最初から最後までまったく気が抜けない徹底した謎解き。

ミステリーファンでも、事件のストーリーの流れを追うような読者、
登場人物の内面ドラマを期待する向かないかもしれませんが、
メモを取りながら推理を楽しむタイプの方には絶対にお勧め。

でもガチガチの理詰め推理でもないんですよ。
全体の印象はユーモラスで、
すべてのシーンで映像が浮かんでくるところは小説としても見事ですね。

以下はネタバレで

第3の殺人は被害者も含めて意外だった。
そこまで靴型に執着してるとは思わなかったものね。

でも鮎川氏も指摘しているように、
年中いつも同じ靴を履いてるわけじゃないから無駄な努力でした。
その上、殺されては意味がない。

ラティマーの靴が脱げなかったら、ナイフがなかったら、
狭い家でラティマーに被害者の聞こえなかったのか・・・

見えない敵につけ狙われていた被害者ということでサイコ系かと思ったら、
実は財産目当てと言う古典的でわかりやすい動機でした。

そういえば、うわさで聞いたことがある、あの密室トリックはこの作品が原作だったんですね。
申し訳ないけど、想像すると笑ってしまう(^_^;)



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「そして医師も死す」 D.M.ディヴァイン

ディヴァインの長編2作目。
本格物というよりサスペンス劇場ですね。

スコットランドの田舎町の診療所の医師が自宅で事故死する。
しかしその2ヶ月後、医師の死は殺人である証拠が見つかり、
死んだ医師の後妻エリザベスと、診療所の共同経営者だった若手医師アランに嫌疑がかかる。

アランは自分とエリザベスの嫌疑をはらすために調査を始めるけど、
これが完全に逆効果になってアランは町で孤立する。



とにかく、このアランがどうしようもないバカ。
思慮や配慮が全くない人間で、
ちょっと批判的なことを言われると頭にきて売り言葉に買い言葉、
相手を攻撃し、あげくに人の秘密から捜査の秘密までしゃべってしまう。
捜査に協力するどころか邪魔してるだけ。

でも本人は自分は絶対に正しいと思い込んでいる。
本当にイライラするキャラクターなんですよね。
なんでこんな人間が主人公なの??!

さらには、婚約者がいるのにエリザベスと不倫を疑われている。
だけど、もうわざと疑われるようなことをしてるとしか思えない。

アランはエリザベスを自分の寝室や家に泊め、
エリザベスはアランの家で勝手に電話に出たり、
アランの同僚に朝からパジャマ姿を見られたりする。
もうやりたい放題。

エリザベスはアランの婚約者であるジョアンについて、
結婚相手を選りすぐり計算づくで手に入れようとする女と酷評するけど、
それは自分のことでしょうが~

でもバカなアランは、そんなエリザベスの言葉に感化されて
ジョアンのことをアランを利用する勝手な女と思い始める。
でも疑惑の未亡人を泊めたり、そのことが噂になっても自分が悪いとは思わない。
そんなことでは婚約者が離れるのは当然なのにね。

翻訳出版が最後になった理由が納得できる駄作です。

ネタバレというほどのことではないけど、一応隠します。


元女優で息をのむほど美しく夫の殺害容疑をかけられている哀れな未亡人。
もし魔性の女を描きたかったのなら残念ながら失敗してる。

アランの幼稚さに、どうしてこんな人間が主人公なのか?
なにか伏線なのかと思ったけど、なにもなかったですね。

博打に狂った男が遺産目当てで殺人を犯すというありふれた話でした。


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「鐘楼の蝙蝠」 E・C・R・ロラック

タイトルを見て、歴史暗黒ミステリーを想像したんですけど、
鐘楼とも蝙蝠とも関係のない、現代のミステリーです。
「BATS IN THE BELFRY」は慣用句で「to be crazy」の意味だそうです。



導入部のあやしい事故、サロンの話題、謎の脅迫者、
そして首のない死体。

道具だては怪奇的なのにおどろおどろしいところはまったくなく
会話もストーリーも非常に理詰め。
すべての可能性を検討して不可能な仮説を一つづつ消していく。
まるで数学か科学の証明のような小説でした。

すべての可能性を考慮ということで、登場人物が全員容疑者になるわけですが、
いくらなんでも最後のふたりくらいは外してもいいんじゃないかと思ってしまいました(^_^;)

無駄なエピソードが少ないパズル的謎解きは好きなのですが、
それにしては伏線が少ないかもしれません。

ちょっと続けて読んでみたい作家ですが、
でも本が高い・・・
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「今見てはいけない」 ダフネ・デュ・モーリア

「レベッカ」で有名なデュ・モーリアの恐怖小説短編集。
恐怖といってもホラーではなくて心理的な恐怖。
読んだ感想でいうと、不気味な感覚の小説集ですね。

不安なこと、わからないこと見えないこと、めまいの感覚・・・
1つ1つの作品の仕掛けはどれもミステリーとしてはよくあるものですが、
そこがポイントではなくて、そこに至る過程が不安定。

悪意、底意地の悪さ、嫌み、嫌がらせという負の感情のオンパレード。
わかってはいたけど英国人のセンスはブラックですね。



「今見てはいけない」
映画「赤い影」の原作。
たぶん映画は見てないと思うけど、ベネチアの迷路のような水路が、
不安定感を増してます。
ただ何となく先が読める展開なので、あまり意外性はないかな。

「ボーダーライン」
父親が死の直前、恐怖の顔で娘を見て言う「なんということだ!」
娘は、その言葉の意味を探るために父親の古い友人に会いに出かけた。
そこで見た父の友人は意外な男だった。
う~ん、
父親の友人の魅力がわからないし、主人公の心の動きもわからなかったです。

「真夜中になる前に」
これも見えない恐怖と、あやしい出来事に巻き込まれた話。
「つい」「ちょっと」という好奇心からどんどん深みにはまっていく。
好奇心に引かれてといっても、ふつうあそこまではやらないでしょう。

「十字架の道」
すっごいブラックギャグ。
エルサレムツアーに来た英国人団体と案内の神父の悲惨。
こんなわがまま勝手な人ばかりの団体はいやだわ。
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「象牙の塔の殺人」 アイザック・アシモフ

これも未読の名作シリーズかな。

大学の研究室で実験中の学生が死亡しているのが発見される。
最初は事故と思われたが、指導教官のブレイドは実験経過に不自然な点があることから、殺人であることに気が付く。



大学の化学実験室で起こった殺人などというと、
専門知識がないとわからない謎解きかと思ってしまいますが、
そんなややこしい話ではありません。
謎解きとしてはフラスコとビーカーがわかるくらいで大丈夫。

#でも「スパチュラ」って、ふつうの男性は知らないのに、
#女性はみんな知ってるのが面白かった。
#瓶入りのクリームをすくい取る小さなヘラのこともこういいます。

第1章の最後の文章で叙述ものかと思ったけど、
叙述トリックに見せかける仕掛けでした。

以下はネタバレで

最初に感じた違和感が、まさか決め手だったとは。
時間に厳しいはずの教授が、約束の時間を守らないことに怒らないこと、
庭先にいた12歳の娘に大事な原稿を渡して夫人に挨拶もせずそのまま帰ったこと、
どう考えてもおかしいと思いますよね。
最初は娘が大学生なんだと勘違いしてしまった。

もう1つ、あとがきの「最近起こった事件を思い出させる」とは、
STAP細胞かと思ったら違う事件でした。
まあ考えてみればあとがきが書かれたのは30年くらい前ですからね。
こういう問題はあちこちであるということなんですね。

感情抜きの数字や理論で問題を解決する理科系の学者でも
人間の欲は果てしがないものなんですね。


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「事件当夜は雨」 ヒラリー・ウォー

「失踪当時の服装は」が面白かったので、続けてヒラリー・ウォー作品です。
この作家の小説はいつもいきなり事件が始まるところがいいですね。
導入部から緊張感があって引き込まれます。

原題は「That Night It Rained」


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「宮部みゆきオールタイムベスト10の1冊」だそうですが、
他の9作はどこで見られるんでしょう?

事件の舞台はコネチカット州の小さな町。
5月にしては肌寒い土砂降りの雨の夜、早めに床に就いた町民ソレンスキーは
玄関のドアを激しくたたく音で目が覚める。
ドアの外に立っていたのは大きなコートを着て帽子を目深にかぶった見知らぬ男。
その男が言った言葉は「ロベンズのうちはどこかね?」のひとこと。
ソレンスキーがロベンズの家を教えると男は去って行ったが、
1時間後に戻ってきて、ロベンズは留守だったと言う。

これだけで先が気になりますよね。
ミステリーなので、その後、当然ロベンズが殺されるわけだけど、
この謎の男の登場が警察の捜査に様々な影響を及ぼしていく。

捜査するのはフェローズ署長と刑事。
いつものように残された証拠を検討して1つ1つ仮説を捜査し絞り込んでいくが、
すべての手がかりを調べつくしても犯人像が見えてこない。
捜査はまた謎の男に戻っていく。

感想は「やられた~!」ですね。
見事です。

次に読んだ「この町の誰かが」は凡作でした。
ヒラリー・ウォー完読を目指すわけでもないなら読まなくてもいいかと(^_^;)
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「失踪当時の服装は」 ヒラリー・ウォー

1952年発表作品の新訳。原題は「Last Seen Wearing」



帯にある宮部みゆきさんのコメント
「捜査小説とはこういうものだ」という手本のような傑作。
まさにその通りに、推理小説ではなくて警察小説。

一般のミステリーでは、いかに読者を驚かせるか騙すかが焦点になっているけど、
そういう意味の意外性は狙ってない。
謎も解決も実にストレートな事件。

発端は女子大生の失踪。
大学の寮に暮らすミッチェルは午前中の授業から戻ったのち、
体調不良を理由に昼食には出かけなかった。
しかし食事を終えたルームメイトが部屋に戻ると
ミッチェルの姿はなく、夜になっても戻らなかった。

通報を受けた警察は捜査を開始。
目撃者探し、駅や銀行、病院への聞き込みなど、
考えられる可能性を1つ1つ消していく。

「キドリントンから消えた娘」の捜査が迷路なら、
こちらは100m走のように一直線。

本当に地道な捜査で証拠を集めていくところは、
よく面倒にならないなと感心してしまうくらい。
まあ仕事だから当然なんだけど。

あと、なんといっても一番気に入ったのは
「警察官からみの脇筋は一切なし」というところ。
だから緊張感が持続するんですよね。

ちょっと続けて読んでみたい作家です。

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「最初の刑事」 ケイト・サマースケイル

副題「ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件」

しかつめらしい制服を着て規則に従って行動する巡査ではなく
私服のまま自由に行動し、複雑な殺人事件を捜査する精鋭の警察官。
スコットランドヤードにはじめて刑事課が出来た当時に、
実際に起こった殺人事件の記録。

1860年、地方の名士の屋敷で起こった幼児殺人事件。
ロード・ヒル・ハウスで起こった殺人事件はまた、
のちのミステリーの1つの形式の原型になった事件でもある。
「カントリーハウスミステリー」
日本でいう「館もの」「お屋敷もの」ですね。

事件の推移や捜査は面白いんだけど、
引用が多すぎること、訳が直訳なことで娯楽として読むのは疲れるかもしれません。
ノンフィクションなので、正確な訳が必要なんでしょうけどね。



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