kigi's Book Diary

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「ヴェサリウスの柩」麻見和史

第16回鮎川哲也賞受賞作。
鮎川賞だけどサスペンスです。

解剖学教室で解剖中の遺体からチューブが発見された。
その中には謎めいた4行詩が書かれた紙が封入されていて、
その詩の暗示通りに事件が起こる。

このように冒頭のあらすじを書くと、おどろおどろしいイメージを持たれると思いますが、
2時間ドラマのようなあっさりした印象の小説です。
気持ち悪い描写は多いですけどね。

腐敗した遺体に群がるねずみの集団など、
これでもか、というほど不気味な描写を並べているのに、
ここまで重さが感じられないというのは、逆に見事かもしれない。

事件を調べる役である主人公が女性であること、
その他の登場人物も記号的で単純化されていること、
文章に無駄な修飾がなく平易でわかりやすいこと。
そんなことから全体的にわかりやすい描写になり、
暗いテーマにもかかわらず、サクサク読める小説になっていのでしょう。

単純化された登場人物+修飾のない文章というと、
パズル的と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、パズル性はありません。

犯人探しも、一応ある仕掛けは施してあるのだけれど、
それが推理にはならず、ただ時系列で事実が明らかになるだけ。

この方は鮎川賞にこだわらず、他の系統に進んだ方がいいかもしれない。
文章の読みやすさは優れているのだから。

一番面白かったのはむしろ巻末の選評。
笠井潔、島田荘司、山田正紀の3氏が書かれているのですが、
それぞれの作風と比べて読むと面白かったです。

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