kigi's Book Diary

本の感想ブログ

「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン

学生時代にいろいろな議論をした懐かしい本。
ミステリー系のサークルでは、必ず取り上げられる作品の1つですよね。

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)
(1976/07)
ハリイ・ケメルマン

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探偵役は、まだ40代後半なのに白髪頭で皺顔の妙な存在感がある英文学教授
ニッキイ・ウェルト。
聞き手のワトソン役は、その友人で元法学部教授の郡検事。
この2人が大学とその周辺で起こった謎めいた事件を解いていく。
アームチェア・デテクティブの連作短編集。

特に表題作の「九マイルは遠すぎる」は論理パズルミステリの傑作。

推理の元となるのは11の単語からなる文章。

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」
「A nine mile walk is no joke, especially in the rain.」

この1つの文章から推論を重ねて殺人事件に至るというのだから、期待しますよね。

まずニッキイ教授が指摘する推論は、
・話し手はうんざりしている
・雨が降ることを予想していなかった、など。
このあとも次々に仮説が立てられ、それが現実と結びついていく。

短い作品ですが、謎解きの醍醐味が味わえます。

他に7作品を収録。
どれもちょっとした矛盾から真相を突き止める、ひたすら論理的なミステリー。
読み終わってしまうのがもったいないような短編集です。
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テーマ : 推理小説・ミステリー    ジャンル : 本・雑誌
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「キドリントンから消えた娘」 コリン・デクスター

これも名作シリーズかな。

若い娘の失踪事件をモース警部が捜査。
すべての関係者が容疑者となるが、捜査が進むうちに、すべての関係者の容疑が晴れてしまう。
これはもう犯人版「そして誰もいなくなった」!
事実、38章のエピグラフには「そしてそれから2人になった」と書いてあるくらいなので、私の連想だけではないかも。

キドリントンから消えた娘

キドリントンから消えた娘

価格:756円(税込、送料別)



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昼休みを終えて高校に戻る途中で姿を消した娘。
警察の捜査捜索にもかかわらず消息不明のままだったが、
失踪の2年後、突然家族の元に消えた娘から手紙が届く。

その手紙を手掛かりに再捜査が開始されるが、担当した刑事が事故死してしまう。
事件の背景には何が隠されているのか?
捜査はモース警部に託された。
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娘の家族や友達、学校関係者を一人づつ取調べていくと、
さっそく怪しい事実を発見。
それを元に仮設を立て、容疑者を特定するモース。
これで解決かと思うと、新事実が出て来て容疑者の犯行が否定される。
すぐに次の容疑者探し犯行仮説を立てるも、また新証拠が出て容疑が晴れる。
ずっとその繰り返し。

モースの仮説では、娘自身も生きていたり死んでいたりするので、
殺人事件から単なる家出説まで、仮説も様々。
この事件は本当に解決するのかと心配になった頃、急転解決。
なにかいきなり一件落着で、真相に付いていけなかった(笑)

とにかく真面目なのかドタバタなのかよくわからない(笑)
次々に仮説を立てて犯人を決め付けるけど、証拠はないしね。
強いて言えば、推理の迷走が楽しい一作です。


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「プレーグ・コートの殺人」 カーター・ディクスン

横溝正史が、この作品に刺激されて「本陣殺人事件」を書いたという密室の古典。
HM卿の初登場作品。

かなりオカルト趣味が強い作品で、これはちょっと苦手。

プレーグ・コートの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-4)プレーグ・コートの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-4)
(1977/07)
カーター・ディクスン

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事件が起こったのは幽霊伝説がある荒れ果てた屋敷。
その屋敷には中世の絞刑吏が埋葬されていて、
悪霊が取り憑いているという伝説がある。

その屋敷で降霊会が行われた。
除霊のために裏庭の石室にこもったのは心霊学者を名乗るダーワース。
しかし彼は石室の中で殺されてしまう。
それも絞刑吏が使っていたという剣で。

石室は入り口の他には鉄格子のはまった小さな窓しかなく、
入り口は二重に施錠されていた。
さらに石室の周りには発見者以外の足跡も残っていなかった。

心霊現象のような事件ですが、意外に現代的なトリックで解決します。
伏線も細かく張り巡らされていますが、さりげなくて、なかなか気がつかないかも。
読み終わったあとに、もう1度確認したくなります。

でも問題はとにかく暗いこと!
床板もはがれているような古い屋敷なので、灯りは蝋燭と懐中電灯だけ。
全体の構造もわからないし、誰がどこにいるのかもわからない。

登場人物のセリフのように、朝にならないとどうしようもない状況。
これこそ映像で見たい作品ですね。難しいでしょうが・・・

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「殺意」 フランシス・アイルズ

「伯母殺人事件」「クロイドン発12時30分」と共に、
三大倒叙ミステリーと言われている作品。
「伯母」「クロイドン」は好きなんですが、これは苦手。

簡単に言えば、うるさい妻を殺そうとする浮気性の開業医の話です(笑)

倒叙ミステリーの面白さといえば、犯罪者の自己中心的な心理の破綻、
犯行の過程でのミスを探すこと、警察・探偵の追求と言い逃れる犯人の応酬、
そういうものだと思うけど、そのどれもが満たされていないような気がします。

異常心理と言ったって、登場人物が全員屈折してるから、
犯人もあまり破綻しないし・・・

退廃主義の小説家が、愛人との生活を自己弁護的に描く私小説だと思えば、
それなりに評価できるのかもしれないけど、私小説も苦手です(^^;)

ただラストは意外性ありです。そこはバークリーらしい。
このラストのため小説のようです。

殺意 (創元推理文庫 (124‐1))殺意 (創元推理文庫 (124‐1))
(1971/10)
フランシス・アイルズ

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「はなれわざ」 クリスチアナ・ブランド

これはまた挑発的タイトルとでも言うのでしょうか。
トリックの「はなれわざ」というより、推理小説としての「はなれわざ」ですね。



このトリックはいくつかの前例があるし、ミステリー作家が1度は挑戦するトリックとも
言えますが、これだけ長いのは、やはり"はなれわざ"

クリスチアナ・ブランドの作品は、容疑者が限定されるクルーズド・サークル的な作品が
多いということですが、この作品も一応「孤島もの」。
ただし、完全に閉ざさた孤島ではなく、そこは観光地でもある密輸と海賊の島。

イタリアの孤島を訪れたイギリスの観光ツアー。
彼らが滞在する島のホテルで、そのツアー客の一人が殺される。
容疑者はツアーの中で被害者と交流があった6人。
しかし、犯行時刻にはその全員が浜辺や海に出ていて、
ツアーに参加していた警官に目撃されていたという不可能犯罪。

ホテルには他の観光客がいるし、島の住人もいる。
もちろん警察もある。

でも、この警察がいいかげんな捜査しかしないので科学捜査は一切なし。
指紋はとらない、血痕は調べない、凶器もアリバイも関係ない。
印象だけで犯人が決まる、恐るべき警察。

そんな中で容疑者ともされるツアー客の面々は、かばい合い、疑い合い、
島から出るために推理を続けます。

人物描写が詳しくて長いので飽きそうになりますが、
それこそがポイントなので注意深く読みましょう。

続きはネタバレで
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「白い僧院の殺人」 カーター・ディクスン

古典ミステリー名作中の名作の再読です。
10代の頃に読んで衝撃を受けた1冊。

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)
(1977/01)
カーター・ディクスン

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H・M卿もの。

ロンドン郊外の古い屋敷、その別館で女優が殺されていた。
別館は池の中州に建つ館で、高く石を敷き詰めた歩道で外界とつながっていた。
遺体が発見された時、雪に覆われたその歩道には発見者の足跡しかついていなかった。

たしか中3くらいで読んだ作品です。
本当に久しぶりの再読だけど、また騙された(^^;)

足跡をつけずに出入りした犯人について、登場人物たちが様々な推理を発表します。
そこで論議されるトリックは、ミステリー好きならほとんど知っているものばかり。
でも当然、そのどれも当てはまらないわけですね。
真相はちょっと肩透かしかもしれないけど、充分意外です。

国王も滞在したという古い屋敷の謎めいた雰囲気、
(廊下の電灯を消すと真の闇になる屋敷ってすごいわ)
不可能犯罪と、論理的、かつ合理的結末。

本格推理のすべての要素が、集約されている作品ではないかと思いますね。
作者の意図、詐術、伏線、仕掛け、犯人、いろいろな要素が詰め込まれています。

続きはネタバレ感想です。

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「七人のおば」 パット・マガー

中学生の頃から読んでみようと思いつつ、何回か挫折。
やっと最後まで読みました。
評価の高い作品だけど、正直な感想はそこまでの名作とは思えないかな。

結婚してイギリスに住むサリーはアメリカの友人から手紙を受け取った。
そこにはサリーのおばの一人が夫を殺して自殺したと書いてあったのだが、
肝心のおばの名前が書いてない。なにしろサリーには7人ものおばがいるのである。
サリーと夫は過去の出来事からどのおばが夫を殺したのかを推理する。

漢字だと伯母と叔母の書き分けがあるから、ひらがなでしか書けない意味がわかりました。

七人のおば (創元推理文庫)七人のおば (創元推理文庫)
(1986/08)
大村 美根子パット・マガー

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犯人も被害者もわからない中で、過去の記憶だけをたどって事件を推理する。
着想は面白いけど、想像してた内容とは違ってました。
私の想像では、おばの一人ひとりを採り上げて、犯人である可能性を推理していくのかと
思っていたんですが、大家族の物語が中心。

7人のおばは父方と母方に分かれているのではなくて全員が姉妹。
姉妹の親は亡くなっているので、すでに結婚し裕福な暮らしをしていた長姉の家で育つ。
若い姉妹が7人もいれば修羅場になるのは想像できるけど、
その想像の上を行くすさまじい姉妹でした。これってドロドロドラマになりますね。

犯行を犯した「おば」は、だいたいわかります。

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「毒入りチョコレート事件」 アントニー・バークリー

古典名作シリーズ(^o^)

学識ある著名人が集まって殺人や毒物をさかなに語り合う犯罪研究会。
そこに持ち込まれた毒殺事件をメンバーが独自に調査。
それぞれの推理を発表したあとに、批評し合うことになった。

最初、安楽椅子探偵ものかと思ったんですが、
このメンバーは聞き込みをしたり、証拠を集めたり
実際の調査もしてしまうんですよ。
素人がそんなことして大丈夫なのかと思うけど、要はロンドンの上流階級という、
誰もがどこかで誰かにつながっている狭い世界の話なので許されてしまうようです。
事件を持ち込んだのが現職の警部という事情もあるだろうけど。
そこには別の意味も・・・

さて問題の毒殺事件とは、試供品のチョコレートに毒が入れられていたというもの。

ロンドンの由緒あるクラブに所属する人物・ユーステス卿、
彼の元にメーカーから新作のチョコレートが送られてくる。
それはチョコレートを試食して感想を書いてほしいという依頼。

しかし新作チョコレートのモニターになる気はないユーステス卿は、
たまたまクラブに居合わせたベンディックス卿にそのチョコレートを譲る。
ベンディックス卿は妻にチョコレートを渡す。
食べたベンディックスの妻が死亡。
チョコレートから毒物が検出、という事件。

事件のあらましを聞いた研究会のメンバー6人は独自の調査を行い、
一晩に一人づつ推理の結果を発表することになった。
少ない手がかりから8つの解釈と6人の犯人が指摘される。

この単純で関係者も少ない事件に8つもの解釈があることに驚き。
読んでいるとどれも納得するものばかり。
しかし、そんな説得力のある解決も次の日になると他の会員によって覆されてしまう。

推理と、それに対する反論が展開されるのだけれど、
証拠がすべて開示されてるわけではないので、読者は傍観者でしかないのが残念。
冷静に考えると、何も証明されてないわけですしね。

そういう意味ではやや消化不良気味の読後感でした。

以下はネタバレです。

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