kigi's Book Diary

本の感想ブログ

「灰色の虹」 貫井徳郎

殺人事件の冤罪で有罪になった江木雅史。
彼を有罪に落とし込んだ関係者が次々に殺されていく。

待望の貫井徳郎さんの社会派作品。
アクシデントの積み重ねで不幸のどん底に落ちていくところまではいつも通りですが、
そこから反転して復讐劇に・・・

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冤罪はなぜ作られるのか?
捜査する人間の思い込み、予断、偏見による捜査ミス、
証人の記憶違い、裁判での審議不充分。
思いつくのはそんなところですが、この本でも予想通りに進みます。

捜査や裁判に関わった人たちが、みんな少しづつ自分の仕事に真摯さを失っていた。
その結果、江木の無罪の主張は受け入れられず有罪判決が確定してしまう。

小さなミスが重なって大事故が起こるというのと同じ状況ですね。
意図しない小さな無責任の積み重ねで一人の人間が殺人犯にされてしまう。
そういう構成はわかるのですが、
それにしては人物をデフォルメし過ぎじゃないでしょうか。

特に伊佐山、あれではほとんど犯罪者!
証拠より自白を重視し、自分の勘を信じる昔かたぎの刑事という存在はあり得るけど、
そういう枠からも完全に外れてますよ。

目撃証人も安っぽい刑事ドラマのような設定ですよね。
刺激が欲しいという軽い男ではなくて、無意識に相手に迎合して相手が自分に求めている答えを作り上げてしまう、悪意のない虚言という設定のが怖かったんじゃないでしょうか。

ところで、みなさんの江木雅史は、どんな印象ですか?
殺人の罪をきせられて家族も人生も失った不幸な人。
もちろんそれはまったくその通りなんだけど、
仕事中に突然上司に掴みかかるって、ふつうじゃないような気がしてしまうんですが。
おとなしいけど、切れると何をするかわからないタイプに見えました。

続きはネタバレです。
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テーマ : 推理小説・ミステリー    ジャンル : 本・雑誌
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「悪いことはしていない」 永井するみ

特別に悪いことはしていないのにトラブルに巻き込まれ、さらには身の危険にまでさらされてしまう。
そんな日常の延長にあるような事件。



これを読むと、つい貫井徳郎の「乱反射」と比べてしまいました。
乱反射はふつうの人が犯した小さなルール違反が大きな不幸を引き起こすという事件。
登場する人々がやったことは重大な犯罪ではないけれど、
あきらかに他人の権利を侵害していることだから、
その報いを受けることも大人なら考えて行動しなければならないこと。

それに対して、こちらは本当に誰でもやってしまう日常のささいな作為。
お世辞、社交辞令、勘違い、自慢話、どれも社会ではふつうにありえること。
でもその言葉を受け取る側の人間が未熟なら、そこから悲劇が生まれてしまう。

こう書くと、なにか深刻な小説に思われるかもしれませんが、
全体にはそんなに重い話ではありません。
主人公は若いOLで、連続ドラマのような軽いノリです。


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「乱反射」  貫井徳郎

幼い子供が犠牲になった不幸な事故。
業者の怠慢が引き起こした安易な事故かと思われたが、
事故に至るまでの経緯には身勝手な人々の自己中心な行動の連鎖があった。



ありそうでなかった小説。
あまりに日常的で、誰も書こうと思わなかったのかもしれないですね。

読んでいると、小説の内容というより、告発されている様々な身勝手行為に対して、
身辺にあったいろいろなことを思い出して腹が立ってきます。

こういう違反行為をする人は、それでなにか得した気分になっているかもしれないけど、
実は大きな損をしていることに気付いていないんですよね。
ルール・マナーを守って他人に気配りをして生活していれば必ず報われるし、
開運グッズを買うより、はるかにいいことがありますよ。
長く生きてると、それがよくわかります。

自分の身近に不幸が起こらないようにするためには身を律して、
天のご加護を待ちましょう(^o^)v


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「火のみち」 乃南アサ

一人の陶芸家の一生を描きながら、同時に昭和という時代を描き、
さらに中国青磁・汝窯の歴史解釈も織り込んでいるという、盛り沢山の作品。

正直なところ、なんでいきなり汝窯の歴史?と思わないでもなかったので、
実は汝窯の歴史の部分は、ちょっと飛ばし読みしました(^^;)

   

---あらすじ---
南部次郎は昭和8年、4男3女の次男として大阪に生まれる。
しかし父親は酒と博打におぼれて働かず、生活苦のため一家で満州に渡る。
だが、その満州で父は現地召集で戦死。兄ふたりも亡くなる。

残された一家6人は終戦と共に本土に引き上げ、親戚に身を寄せるが、
その親戚も貧しく、母親は苦労から病床に。

生活の手段のない一家を養うため、姉は都会に出て身を売る。
次郎も懸命に妹たちの世話をするが、やがて母親は亡くなり、
母親の葬儀に借りた金が返せず、借金のために妹まで売られそうになる。
妹を守るために人を殺してしまった次郎は、そのまま投獄される。

刑務所の中で陶芸を覚え、その才能を見出された次郎は、
出所後に陶芸家の道に進み、やがて新進気鋭の陶芸家として注目されるまでなった。

一方、一人残された妹は女優を目指し、芸能界で一応の成功を収める。

兄妹共に成功を収め、順風に思えた生活だったが、
また新たな不運、不幸に見舞われる。
---ここまで---

帯ドラマのような波乱万丈のストーリーですが、
そのわりに予想できるような事件しか起こりません。
上下巻の長さでも面白く読めますが、あまり後に残るものはなかったですね。
昭和を生きてきた人なら、あの頃の自分を重ね合わせて
懐かしい思い浸れるかもしれません。


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「夜想」 貫井徳郎

14日に書いた「光と影の誘惑」の巻末解説で、貫井さんはミステリーと社会派、
この2つの読者の間で宙ぶらりんの状態をさまよっていると書かれていたけど、
これはその社会派ファンへ向けた作品。
宗教と救いを扱っています。
検索でヒットした数や好意的感想を読むと、こちらのファンの方が断然多いのだと実感。
それにしては、内容はちょっともの足りないですが。




妻と子を事故で一度に失った男・雪藤と、
その悲しみに共感して男を救いたいと願う、若き美女・天美遙。
このふたりの葛藤と救いの物語。

こう書くとメロドラマのようですが、ただのメロドラマじゃありません。
天美遙が救いたいと願っているのは雪藤だけではなく、
生きていく上での様々な問題に苦しんでいる多くの人々。

そう、遙が解決するのは心理的なものではなく現世利益が中心。
恋愛の悩み、商売の悩み、家族の悩み。
だからこそ短期間に多くの人が群がってくる。

人が増えれば、それが組織になり団体になる。
しかし元々個々の悩みを解決してもらうことを目的として集まった集団なので、
組織に求めるものが違う。あるいは何を求めるべきなのかわかっていない。
その思惑の違いが 小さな分裂になり、やがて崩れていく・・・

「流されもの」ジャンルかと思ったら、ラストは予想外でした。
なにか組織論のようですね。

雪藤にしても遙にしても、どうしてその方向に行ってしまうのかな?
流されるままなのが、もどかしかった。

そういう意味では、雪藤より天美遙に共感しました。
遙に心酔している人たちのはずなのに、
遙の真意が伝わらないのが恐ろしい。
いっそ宗教にしてしまえば、もっと簡単なのかもしれないけどね。

人間の集団をコントロールする難しさを感じます。

娘を探している子安嘉子の存在は、ミステリーファンへのアリバイなのか、
社会派ファンへの抵抗なのか。
私は子安嘉子のストーリーをメインに書いてほしかったけど、
そういう読者は少数派のようです・・・

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「光と影の誘惑」 貫井徳郎

中編4作を収録した作品集。98年発行。
これは当たり。
図書館であまり期待もせずに借りてきた本だったのですが、
4編とも仕掛けもののミステリーとして完成度の高い作品。



私、貫井さんについて完全に勘違いしてました。
貫井さんはこういうミステリーっぽい作品も書くのかと驚いてたら、
実は鮎川哲也賞候補作でデビューしてたんですね。
それならトリック好きも納得。

本書の巻末の解説で我孫子武丸さんが、貫井さんが本来書きたかった「トリッキィな
どんでん返し」と、話題になってしまった「重い社会派的、ドロドロした人間の暗い情念」を描いた作品と、「この2つの読者の間で宙ぶらりんの状態をさまよい」と書かれてるけど、たしかに私も情念作家と思っていました。
でもトリッキィな作品もこれだけ書けるなら、この分野をどんどん書いてほしいですね。

それにこの4編は単なるどんでん返しだけじゃないんですよ。
トリック自体はそれほど珍しいものでもないけれど、
そこに至るまでの人間描写や心理描写がうまいんですね~、やっぱり。
だから1つ1つの作品が読み応えがあります。

「長く孤独な誘拐」
「二十四羽の目撃者」
「光と影の誘惑」
「我が母の教えたまいし歌」

↓ネタバレを含む各話感想

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「さくら草」 永井するみ

いわゆる業界シリーズの1作。
今回は少女向け高級ブランドを巻き込んだ連続殺人事件。



ジュニア向け高級ファッションブランド「プリムローズ」
その人気ブランドの服を着た少女がラブホテルの駐車場で殺された。
警察はプリムローズの服を着た少女に執着する「プリムローズロリータ」と
言われる男性たちに焦点を絞って捜査を続けるが、
進展がないまま次の殺人事件が起こる。



いきなり事件発生の場面から入る導入部は、緊迫感もあって、
このままサスペンス的に話が進むのかと期待したのですが、それは中盤まで、
その後はブランドの内幕が延々と描かれます。

特にプリムローズのゼネラルマネージャーである日比野晶子が
前面に出てくるようになってからは、事件の謎解きというよりも
ファッションブランドに関わる人々の生態を描く小説になって、
なにかワイドショーのような展開。

娘に流行の服を着せたい母親
選別された服を着ることで自分の価値が上がったと思い込む少女たち。
その少女たちに執着する男たち。
自らの自己確立をブランドに投影するマネージャー。

ブランドに思い入れがない私には、
刑事以外の登場人物の行動がすべて謎でした(笑)

事件としては平凡です。

ということで中盤までは面白い小説です。




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「空白の叫び」 貫井徳郎

主人公は14歳の3人の少年。
生活環境がまったく違う3人の共通点は殺人犯であること。

上巻では3人の少年の生い立ちや事件に至る経緯、
事件後のことなどが丁寧に描かれてます。
ただ少年院の中の描写は長いような気がして、ちょっと飛ばし読み。

下巻になると、社会に戻った少年たちのまわりが一気に動いて、面白くなります。
私の好みから言うと、下巻だけでよかったと思ってしまったけど、
それでは犯人の視点、犯人の置かれた状況を描いたことにならないんだろうね。



少年たちの内面は、幼児性から成長できない孤独そのもの。

小さな子供は自分の心理状態を言葉で表現する能力はないけれど、
もし3~5歳くらいの子供が心で思ってることを言葉にしたら、
こういう表現になるのではないかと思えてしまう。

とにかくなにがなんでも自分の感情が絶対的に中心。
まわりへの配慮は欠片すらない。
そして気に入らないものは排除。欲しいものは、もぎ取る。

葛城の事件は、お気に入りのおもちゃを取られて癇癪起こした子供そのもの。
幼児なら相手を叩いても泣いて終わることが、
14歳の腕力では殺してしまうということ。

そして彼らは最後まで、その幼児性から成長することが出来ない。
自分がいかに幼いかも自覚できない。
3人とも決して頭が悪いわけではない。
なにが原因で精神的成長が妨げられてしまうのか?
それはやはり身近にいる大人が、彼らと正常な人間関係を築けなかったことが
原因としか思えない。

人間の幸福は、ものごころついた時に
まわりにどんな大人がいるかで決まるのかもしれない。


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