kigi's Book Diary

本の感想ブログ

「大博打」 黒川博行

誘拐ものです。
黒川作品は読まず嫌いをしていたんですが、これは面白かった。



72歳の老人が誘拐され、息子である会社社長に身代金の要求があった。
それがなんと、金塊2トンという、とんでもない要求。
金額も大きいが当然重量も大きい!
はたして犯人は、どうやって受け取るつもりなのか?

この受け渡しのトリックもなかなか盲点で面白いのですが、
なんといっても読みどころは誘拐された老人のキャラ。
大阪商人というか、なかなかの曲者で「大誘拐」のお爺さん版という感じ。
私は「大誘拐」はあまりがハマらなかったので、こちらが方が好きですね。

関東人としてちょっと取っつきにくいところは登場人物のキャラが濃いところかな(笑)

冒頭、身代金を運ぶ車を密かに尾行して警護する警察の車。
その中の会話は、「退屈やな。ラジオかけてくれ」えっ(・_・;)
ラジオで流れるナイター中継、そして始まる阪神談議(笑)

もう一人、身代金を運ぶのは、なぜか社長の愛人なんだけど、
この女がまたとんでもない行動を・・・
まあ、愛人の父親の安否なんかどうでもいいよね。自分が大事。
でもびっくり(笑)

そんな始まり方ですが、読後感はいいし、
新喜劇みたいな警察に慣れれば、かなり面白かったです(^・^)


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「こわい部屋」謎のギャラリー 北村薫編

新潮文庫の「謎のギャラリー こわい部屋」ちくま文庫新装版。
ボーナストラックとして「価値の問題」が追加。

ホラーというより、世の中やっぱり人間が一番怖いという話が多いです。

こわい部屋: 謎のギャラリー (ちくま文庫)こわい部屋: 謎のギャラリー (ちくま文庫)
(2012/08/08)
北村 薫

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この中で特に読みたかったのは
「待っていたのは」ディーノ・ブッツァーティ。

カタストロフィに向かう流れに妙な現実感があってこわい。

汽車の乗継で見知らぬ駅に降り立った若い夫婦。
暑い車内で立ちっぱなしだった二人は、疲れきった体を休めるために
一晩の宿を探すけれど、なぜか宿はどこも満室。

やっと見つけた旅行者用休憩所で浴場を見つけたけれど、
そこにも長い行列ができていた。
しかも妻が身分証明者をなくしたために風呂にも入れない。

不満を抱えて外に出た二人は公園を見つけ・・・

若くて勝手な女性の悲劇。

異常なことなのに違和感のない流れで起こるところも恐ろしいけれど、
一番怖いところは、うっかりすると加害者の視点で読んでしまいそうになるところかもしれません。

二十六階の恐怖 ドナルド・ホーニグ

タイトル通り。
高所の恐怖というのは、進むも恐怖、戻るも恐怖。
どうにもこうにも二度と安全な場所に戻れないという恐怖なんですね。

ナツメグの味 ジョン・コリア

これも妙に身近な恐怖。
なんというか”スイッチ”がある人が増えた気がします。

全20編
チャイナファンタジー 南伸坊
7階/待っていたのは ディーノ・ブッツァーティ
お月さまと馬賊/マナイタの化けた話 小熊秀雄
四つの文字 林房雄
煙の環 クレイブ・ライス
お父ちゃん似 ブライアン・オサリバン
懐かしき我が家 ジーン・リース
やさしいお願い 樹下太郎
どなたをお望み? ヘンリィ・スレッサー
避暑地の出来事 アン・ウォルシュ
ねずみ狩り ヘンリィ・カットナー
死者のポケットの中には ジャック・フィニィ
二十六階の恐怖 ドナルド・ホーニグ
ナツメグの味 ジョン・コリア
光と影 フョードル・ソログープ
斧 ガストン・ルルー
夏と花火と私の死体 乙一
価値の問題 C・L・スイーニイ
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「透明な一日」 北川歩実

ずいぶん前に「猿の証言」を読んで、なんとなく読みにくい作家さんだと思った記憶が
あるけど、やっぱり読みにくかった。
ではなぜ読んだのかというと、例によって「どんでん返しが見事」というコピーに釣られたから(笑)



記憶が再生できず永遠に同じ一日を繰り返す父親、
娘の成長も父親の記憶の中では12歳で止まったまま。
そんな娘が婚約者を連れて父の元にあいさつにやってくる。

実は、娘とその婚約者は過去のある事件の被害者という共通点があった。
ふたりとも一連の放火事件で母親を亡くしていた。
そのふたりが結びついたことが、あらたな連続殺人に発展する。

女性の登場人物が性格的にきつい人間ばかりで、そこでつまずいてしまいました。
でも、伏線も充分だしトリックも意外。
この世界になじめる人には面白いかもしれません。 

続きはネタバレです。

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「サクリファイス」 近藤史恵

本を開けたときの第一印象は「わ~、行間が広い」(笑)
だから長編でも、あっという間に読めてしまいます。

以下はかなり否定的感想なので、この作品が好きな人は読まないでね。





さて、いいですか。
残念ながら、この本は苦手。

ミステリーとしては面白いです。
ミスリードからの逆転と、次々に予想を裏切られていく展開。
最後まで引き込まれて読みました。

でも読み進むにつれて嫌な気持ちが残ってしまいました。
それは登場するすべての人物に対して。

自転車レースのことはなにも知らないけど、本当にこういう世界なの?
団体競技なのに勝利は個人に与えられること、
アシスト役はアシスト役に徹すること、
エースの自転車にアクシデントがあったら、
アシスト役は自分の自転車を差し出して、自分はリタイアするなんて、
見てて辛くなるだけのような気がする。

もちろん選手はそういう競技だとわかってやってるんだから、
エースが勝てればそれでいいんだろうけど、私は見たくないですね。

これがヨーロッパで人気の競技というのも意外。
なんか個人主義のイメージが強いので。

でもむしろ日常的に集団に忠誠であることを要求されている日本人の方が
スポーツとしてこういう競技をやることは苦手かもしれないですね。

あ、そうか、日本人は団体競技なのに最終的に個が勝つことが苦手なのかもしれない。
勝つも負けるもみんな一緒というのが好きなのよね、たぶん。

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続きはネタバレです。

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「1950年のバックトス」 北村薫 

短編集。
95年から2007年まで様々な雑誌に掲載された短編23作を収録。

それぞれの作品の趣向も様々で、ホラー、謎解き、日常のスケッチ、人情話まで
いろいろな話が読めます。
感想は、とにかく「上手い!」の一言に尽きます。



タイトルになっている「1950年のバックトス」は野球の話。
意外性と種明かし、ラストの感動、短編小説のお手本のような1編。
やはりこれが一番面白かったです。

「昔町」は現在の昭和ブームを予言したような作品。
でも昭和ってそんなにいい時代だったのかな?
懐かしいというのはわかるけど。

ノスタルジーといえば「小正月」も、しみじみさせられました。
「恐怖映画」も、ある意味ほほえましく味のある作品でした。

気軽に読める1冊。

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「玻璃の天(はりのてん) 」 北村 薫

社長令嬢・花村英子と、お抱え運転手ベッキーさんのシリーズの2作目。



これは面白かった。
本に関する様々なエピソードは、本好きにはたまりません~
もちろん探偵小説好きにも興味深い内容。
今回は「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3作を収録。

前作からは1~2年経っているようですね。
ロス五輪は昭和7年で、教文館ビル完成が昭和8年、
「玻璃の天」には「ベッキーさんと過ごした2年近い日々」とあるので、
花村英子嬢も17歳くらいになっているということかな。
そのせいか、恋にまつわる話が多くなってます。

「幻の橋」
これは昭和8年のロミオとジュリエット。

内堀百合江と内堀東一郎は祖父が兄弟という、いわゆる再従兄妹。
しかし、その両祖父は犬猿の仲で一族は対立している。
そんな二人が恋に落ちて、解決策を相談される英子。
例によって答えを出したのはベッキーさんなんだけど、
あいかわらず深い人間洞察で、見事な解決策を提案する。
途中まで成功していたその策も、最後に思わぬ妨害が入る。

事件の真相には旧家の"おり"のようなものが澱んでいます。

しかし、荒熊のような明文化されてない言論統制はおそろしいですね。

「想夫恋」
これは本や映画の話が楽しい1編。
ちょっと前の学生なら(だいぶ前?^^;)「秘密の儀式」なんて、
懐かしい方もいるんじゃないでしょうか。

「特徴のある挿絵」のある本も、「玻璃の天」に出てくる"たはぶれ書き"も、
"蛍"と"雁"の本も、どれも特別に好きな本ばかり。
読みながら私まで女学生時代に戻ったような気分になりました。
ちなみにこの3冊は、あまりに面白くて原文まで読んだ本(^o^)

さて肝心の事件は華族のお姫様の駆け落ち事件。
お嬢様は暗号が好き(^^)

「玻璃の天」
これはなんと、お屋敷もの。
意外性があって面白い。すっきりしないけど、すっきり。

ベッキーさんの謎も少しづつ解けてきます。
まだまだ謎の部分も多いですが・・・
ベッキーさんと花村社長との関係とか、桐原侯爵の息子とのこととかね。

このシリーズ3作で完結予定だそうですが、もっと読みたいですね。

1作目の「街の灯」感想はこちら

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「街の灯」  北村薫

元士族の社長令嬢・花村英子と、お抱え運転手・通称ベッキーさんのコンビが、
日常の謎から殺人事件までを解き明かす連作ミステリーシリーズ。その1作目。
中編3作を収録。
いかにも北村作品という雰囲気を持ったシリーズです。



2003年1月に発行された本なのですが、読むのははじめて。
今回、シリーズ第2作「玻璃の天」が出たので、
1作目から読み始めることにしました。

時代は昭和7年、士族出身で社長令嬢でもある花村英子は女子学習院に通う
女学生。学友には侯爵や伯爵の令嬢がいる。
お嬢様が外出する時は専属運転手とお付きの女中が付き添うような世界だから、
想像もつかないというより宝塚の舞台を見るような感じ。
でも中身は正統派の謎解きなので、男性でもひくことはありません(笑)

「虚栄の市」
サッカレーの小説はタイトルを聞いたことがあるくらいなので
この本でやっとあらすじだけでも知りました(^^;)
こういうストーリーなんですね。
これをシリーズの第1作目のタイトルにしたということは、やはり伏線なのかな。

扱われる事件は自ら掘った穴の中で死んでいた男の謎。
とても上流社会のお嬢様が関わる事件とは思えないけど、
このお嬢様は乱歩も読むような女性なので、あの「名作」も絡んできたりして、
最後はニヤリとする謎解き。

「銀座八丁」
これは暗号もの。ただし何かの事件ではなくて学生の暗号遊び。
ベッキーさんの新たな一面が明らかになることで、
彼女の謎がますます深まります。

「街の灯」
タイトルはもちろんチャップリンの名作。
何気ない冒頭のエピソードから幾重にも伏線が絡み合う、これは見事なパズル。

財閥の御曹司が軽井沢の別荘で自作映画の映写会を行っていたが、
それを見ていた家庭教師が急死する。
侯爵令嬢が同席していたことも慮って、その場は穏便に片付けられたが、
やはり招かれて映写会にいた英子は、のちにいくつかのおかしな点に気付く。

何不自由ない立場でも、身分が付けば責任や義務も生じてくる。
それなりの苦悩はあるのかもしれませんね。

時代背景と身分差ということで連想するのは宮部みゆきの「蒲生邸事件」。
そして北村さんはご存じなかったという「はいからさんが通る」も思い出しました。

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「天使の眠り」 岸田るり子

同僚の結婚式で偶然昔の恋人と再会したのだが、
その彼女は記憶にある女性とまったく違う人物になっていた。
同名の別人かと思ったが、相手も自分のことを覚えていた。
いったい彼女になにが起こったのか。




非常に興味をひかれる謎なんですが、そこから解決までが長い。
しかもその長さは謎を突き詰めていく過程ではなくて、
彼と彼女の思い出話。

ミステリー仕立ての恋愛小説と思ったほうがよさそうです。

この作家さんの小説は2作目なんだけど、
どうしても登場人物の思考についていけません。

以下ネタバレ↓

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