kigi's Book Diary

本の感想ブログ

「ヴェサリウスの秘密」 ジョルディ・ヨブレギャット

スペインミステリーを読むのは人生はじめてかも。

16世紀の解剖学者アンドレアス・ヴェサリウスが書き残した精密な解剖図「人体構造論」。(ネットで見られます)
その「人体構造論」には未発表の第8巻があり、
そこには人体に関するある秘密が書き残されていた。



書籍に関する謎解きは大好きなので、紹介文を見てすぐ読んでみたのですが、
内容は実は冒険活劇でした。

舞台は1888年、万国博覧会を3週間後に控えたバルセロナ。
父親の葬儀のために帰郷した若き医学者ダニエル。
彼は地元紙の新聞記者から父親が実は殺されたのではないか、
そしてその死は最近バルセロナで起こった若い女性の連続バラバラ殺人事件に関係しているらしいと聞かされる。

万国博覧会開催の表と裏で、名誉と富、愛情など人の欲が絡み合ってドロドロ…
暗い石畳の街の深夜の追跡劇、あやしい娼婦街と黒幕の美女、
下水道に住みつく謎の集団、巨大迷路、暗号、男装の令嬢・・・
娯楽小説的要素をこれでもかというほど盛り込んだ大ロマン。

途中まで読み進むと、ある有名なゴシック小説を思いだしますが、
その他にもいろいろなゴシック小説が浮かんできました。

でもなにしろ元が解剖学の謎なので、バラバラ事件ばっかりで
そこが怖かった。
ただ19世紀ごろの大学の雰囲気は好きですけどね。

ラストで読後感がガラッと変わるところが面白かったです。

ネタバレだから反転させてください。
バラバラ殺人事件や狂気の医学実験などを次々に実践するマッドサイエンティスト。
その恐ろしい目的はなにか?と思ったら、
「愛する人を蘇らせたかった」とは。
まさかそんなメロドラマで終わるとは思わなかったので、意外性に驚いた。
冒険活劇が大メロドラマの印象になりました。

でもやっぱりフランケンシュタインを思い出しますね



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「緑のカプセルの謎」 ジョン・ディクスン・カー

これも懐かしい作品です。
今回新訳が出たので30年ぶりくらいに読んだんですが、
こんなわかりやすい話だったかな?
謎も整理されているし、ヒントも充分書き込まれているし、
とても明解な謎解きミステリーでした。

カーは、解決が独善的だとか整合性がないという評価が多いけど、
もしかして翻訳が悪かったんでしょうか??

複数の人間が注目していて、撮影もされているという状況で起こった毒殺事件。
謎の提示も面白い。




目撃証言の信頼性を検証する実験はご存知の方も多いでしょう。
事件の映像を見せたり、あるいはその場で事件を再現し、
その後、その場にいた人たちの証言を集めると、一致しないことが多いという実験。

それを個人で実験しようとしたのがマーカス・チェズニー。
彼は自宅に身内や友人を集めて寸劇を見せ、
その後、用意した質問に答えさせることで、
人間の記憶のあいまいさを証明しようとした。

しかし、その寸劇の中で本当に自分が殺されてしまうんですね。
彼が毒を飲まされたシーンは複数の人間が目撃し、
さらに映像にも記録されていた。

映像が残っているというのは、かなりワクワクしますよね。

で、ここから犯人を割り出すことになるのはエリオット警部とフェル博士。

被害者となったマーカスが用意していた10の質問。
それを事件のあと、あらためて目撃者に問うのだけれど、
これが見事に食い違っている。
・机に箱があったか? あったならばどのようなものが?
・フランス窓から入ってきた人物の身長は?
など、質問自体にもひっかけがあって、これだけでもかなり面白い。

さらにその食い違いを映像で確認。
このあたりは検証はとても面白いんだけど、見ている人間がうるさかった。
「ほら私が正しい」「いや違う」って大騒ぎ。
小学生じゃないんだから(笑)

でも隣の部屋にいる人間の身長、6フィートと5フィート9インチは、
はっきり見分けられるものなんでしょうか。
ということで調べてみました。

ネットの換算表で見ると、6feetは182.88cm、5feet9inchは175.26cm。
マリノスならマルティノスと天野純くらいの差かな。
これならたしかに見分けられるかも。
代表でいうと、本田と香川の差くらいですね。

ちょっと話がそれましたけど、記憶していた内容よりかなり面白かったです。

続きはネタバレ反転↓
【 
終盤の銃撃事件は本当に単純な事故ということらしいので、
ちょっと余計な気がしましたね。

あと、読唇術のあたりはちょっと都合がよすぎました。


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「火刑法廷」 ジョン・ディクスン・カー

200年前に処刑された毒殺魔にそっくりな女性。
壁に消える貴婦人。
納骨堂から消えた死体。

怪奇ロマンのように始まったストーリーが見事な伏線回収ですっきり解決、
と思いきや、さらに・・・
というお話。



結末に賛否がある作品ですが、論文じゃなくて小説ですからね。
謎があるのもまた楽しい。
読み終わった後にまた最初から読み返したくなるし、2度楽しめる作品です。

私がミステリーを読む楽しみは魅力的な謎。
パズルストーリーとして面白ければ、それで充分。
そういう意味ではベスト10には入る作品ですね。

中盤の登場人物たちの議論も
作品の中で登場人物が事件について議論する展開はかなり好きでして、
カー作品の魅力の一つだと思ってます。

新訳版


ちょっとネタバレ↓


オカルト的な謎が現実的に解明されるところはいいのですが、
「誰かに見られているような」は、実は警察が監視していた。
「消えた写真」は、本人が落としたことに気付かなかっただけ(笑)
「誰かに呼ばれているような」は、親切にも落し物を届けようとしてくれた人。
これは"オチ"なのか?(笑)


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「キングの身代金」 エド・マクベイン

懐かしの87分署シリーズ。

黒沢明がこの作品から『天国と地獄』の発想を得たことで有名ですが、
内容はまったく違ってます。

こちらはいかにも昔のアメリカの警察ドラマ。
個性的な刑事と行き当たりばったりの犯罪者。
身代金受け渡しの緊張場面などはないです(^_^;)

でもまだ50・60年代は犯罪もけっこうのんびりしてるんですよね。

スティーブ・キャレラ刑事とかマイヤー・マイヤー刑事は有名かと思ったんですが、
検索してもあまりヒットしなかった。
過去のキャラになってしまったのかな。
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「大博打」 黒川博行

誘拐ものです。
黒川作品は読まず嫌いをしていたんですが、これは面白かった。



72歳の老人が誘拐され、息子である会社社長に身代金の要求があった。
それがなんと、金塊2トンという、とんでもない要求。
金額も大きいが当然重量も大きい!
はたして犯人は、どうやって受け取るつもりなのか?

この受け渡しのトリックもなかなか盲点で面白いのですが、
なんといっても読みどころは誘拐された老人のキャラ。
大阪商人というか、なかなかの曲者で「大誘拐」のお爺さん版という感じ。
私は「大誘拐」はあまりがハマらなかったので、こちらが方が好きですね。

関東人としてちょっと取っつきにくいところは登場人物のキャラが濃いところかな(笑)

冒頭、身代金を運ぶ車を密かに尾行して警護する警察の車。
その中の会話は、「退屈やな。ラジオかけてくれ」えっ(・_・;)
ラジオで流れるナイター中継、そして始まる阪神談議(笑)

もう一人、身代金を運ぶのは、なぜか社長の愛人なんだけど、
この女がまたとんでもない行動を・・・
まあ、愛人の父親の安否なんかどうでもいいよね。自分が大事。
でもびっくり(笑)

そんな始まり方ですが、読後感はいいし、
新喜劇みたいな警察に慣れれば、かなり面白かったです(^・^)


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「どんなに上手に隠れても」 岡嶋二人

前回書いた「99%の誘拐」より、こちらの方が面白かった。

テレビ局から売出し中のアイドルが誘拐される事件。
まだ新人なのでスタッフも少なく、控室で一人になったところを連れ去られた。

身代金は1億円。
所属事務所にはお金がないので、
身代金はCM出演が決まっていたスポンサーが肩代わりすることになる。
その裏には、人質解放と同時にCMを流せば
一気に商品の知名度が上がるという計算があった。
そこから代理店、フリー記者など、様々な利害が絡んできて
奇妙な誘拐事件になっていく。

なんでもお金に換算する世界は怖い。

裏でいろいろ損得勘定をする芸能・マスコミ界も面白いけど、
なんといっても身代金受け渡しがスリリングでユニーク。
これは盲点でしたね。

そういう点で、今でもトップレベルの誘拐小説だと思いますね。

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「99%の誘拐」 岡嶋二人

「鞆の浦」で思い出して読み返したくなった作品。
1988年の作品なので、28年ぶりくらいの再読。

実は前に読んだときに、ものすごく面白かった記憶があったんですが、
今回再読したら、記憶していたよりあっさりした事件だった。

PCを駆使した誘拐事件ですからね。
当時は驚きの機能の数々も、今なら当たり前のことばかり。
ゲームを町に持ち出すことなんて、28年前なら斬新ですよね。

今読むと、むしろ第1章で起こる事件の方が緊張感があって面白かったです。
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「赤い右手」ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ

わ~~びっくり。
これもミステリーなのね。
ある意味、盲点を突いたミステリーです。

意外な犯人、意外なラスト、騙しのテクニックも出尽くした感がありますが、
まだこの手が残っていたか。



98年「このミス」、海外2位。
タイトルは有名だけど、全集に入っている作品なので、
なかなか読む機会がなかったんですが、
14年に文庫版が出て入手しやすくなりました。

ただ、評価が最低から最高まで極端に分かれていて、
なかなか手が出なかったんですよね。

いろいろなところで話題になっていたので、ついに読んでみました。
結果は・・・
なんというか良くも悪くも評価通りだった(笑)

面白いという方の言っている意味もわかるし、
くだらないという方の言い分も正しい。
要するに読者を混乱させる文章で構成されている小説。

それを1つのトリックとしてみれば
トリックの死角をついた作品ということになるし、
意図されたものではないと考えれば、小説として支離滅裂という感想になる。

個々人のミステリーの定義や求めるもの、
さらには好みで変わることかもしれませんね。

読者が一番最初に感じる数々の疑問、不審、怪訝、懐疑、
それをそのまま放置して最後まで持っていく強引さはすごい。
でも、一応ちゃんと説明されてるんですよね・・・

以下はネタバレで

倒叙ものを書こうとして失敗した作品かと思った(^_^;)

そもそもまず不審に思うことは、「なぜハネムーンの途中で放浪者を車に乗せるのか?」
しかも死んだ猫を抱いてたボロボロの服を着た男なんですよ。
女性の連れがいたらスルーしますよね。

その他、
ギザギザ帽子はどこで手に入れたのか?
自動車整備業者はデクスター氏しかいないのか?
NYにはリドルという人しかいないのか?

だいたい真犯人なら「車を見ていない」と言い張ることはないと思うよね。
「通り過ぎて行った」と言った方が整合性があって疑われないんだから。

もういろいろ謎。


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