kigi's Book Diary

本の感想ブログ

「狙った獣」 マーガレット・ミラー

さすがミラーというか、
わかっていても毎回騙されてしまうのはなぜでしょうか??

考えてみると、伏線やプロットの組み立てが、
いわゆるミステリー小説とはまったく違うということのようです。
「まさかそれがヒントだったとは!」で、いつも驚くんですよね。



孤独のあまり心を病んだ女性が幸福な人々に復讐するというストーリーは、
マーガレット・ミラーのイメージ通りの怖い話です。

復讐のために彼女が使うのは電話。
標的となった人物に、知り合いを装って電話をかけ、
うっかり失言したように嘘を言って不安をあおっていく手口。

嘘だと思っても心のどこかに引っかかって、疑心暗鬼になっていく。
ネットの噂みたいですね。
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「耳をすます壁」 マーガレット・ミラー

お見事です。
やっぱりミラーは面白い。



アメリカの中流夫人ウィルマとエイミーがメキシコへ旅に出かけた。
しかしウィルマは滞在していたホテルの窓から墜落死。
その時、エイミーは部屋にいたはずだが記憶を失っていた。
そしてエイミーはアメリカに戻った後に行方不明になる。

タイトルはホテルの部屋の中のウィルマとエイミーの会話を
掃除道具部屋に隠れていたメイドが聞いていたことから。
この盗み聞きがキーになってくるんですね。

でもとにかくメキシコのホテルがあやしすぎる。
メイドは客の服を盗むことを当然と考えているし、
支配人には裏の顔がある。
バーにはジゴロが出入りして客をカモにしている。

そしてウィルマが買ったという謎めいた銀の箱。
メキシコの独特の雰囲気がウィルマとエイミーが巻き込まれた事件をいろいろ想像させます。

途中までは結末もある程度予想して読んでいたのですが、
そこから枝葉がいろいろな所へ延びて、
最後はどこへおさまるのかわからなくなっていく。

平凡に思えた日々が崩れていく・・・、ミラー本領発揮の1作です。
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「二度のお別れ」 黒川博行

「大博打」が面白かったので、また黒川作品。
これも面白かった。
誘拐ものです。



三協銀行新大阪支店に強盗が押し入った。
客の一人が強盗を取り押さえようとしたが逆に撃たれ、
さらに人質として連れ去られてしまう。
警察は重傷を負ったと思われる人質と犯人を捜索するが、
そんな中、警察に身代金1億円要求の手紙と人質の小指が届く。

銀行強盗が営利誘拐に変わってしまうというのは、
犯罪としての質が違うから上手くいくのか疑問になりますが、
そこは読んでみればわかるということ。

読みどころはなんといっても全体の半分を占める身代金受け渡し場面。
次々に変わる犯人の意図が読めず翻弄される警察。
これはまだ携帯電話がなかったころなので、
ちょっとじれったいところもありますが、緊張感があって面白かった。

解説にも書かれてたけど、ラストがちょっと残念。

ついでに書いちゃうけど、泡坂妻夫の「湖底のまつり」はダメでした。
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「子守唄」 カーリン・イェルハルドセン

いよいよショーべり警部シリーズの3作目。
「お菓子の家」「パパ ママ あたし」に続く3部作の完結編。

1つ1つの作品で主に語られる事件はまったく別のものだけど、
刑事たちの抱える事件やトラブルは、この作品で一応解決。



第1作「お菓子の家」は特別に斬新な仕掛けがあるわけではないけれど、
よく練られた悲しい事件の物語。

2作目の「パパ ママ あたし」は、謎というより歪んだ事件そのものを描いた
ある意味、告発のような小説。

この「子守唄」は子供を取り巻く大人たちの心の課題で、
前2作より、重く辛い話です。

被害者、加害者、そしてショーべり警部の過去の謎が
少しづつ明らかになっていくという、私としては好きなタイプの小説。

きっかけとなる事件は、母子3人の惨殺事件。
結婚して移民としてスウェーデンに定住したフィリピン出身の女性と幼い二人の子供。
彼女は離婚後に収入とは不相応の高級マンションに引っ越し、
そこで子供と共に無残に殺される。

警察は当然彼女の裏の生活を想像したが、
捜査の結果は、堅実に働く平凡な生活の証拠しか出て来なかった。

動機が分からない殺人。

実はこの事件は結果であって、その前に何人かの被害者がいるのですが、
彼らが巻き込まれてしまった事件の重さと、
その代償の大きさが救いようがなくて、鬱々とした気分になってしまいます。

北欧のミステリーや映画を見ていて感じるのは、
何かの問題を、精神の内側に内側に掘り下げて行ってしまう怖さですね。
自ら傷を深くしていくような心の動きはひたすら重い。
ちょっと突き放して読まないときついです(^_^;)

そして刑事さんたちのイメージも変わりました。
ショーべり警部~~!!

1作目では有能で責任感があり、部下と家族思いの警察官で、
まさに警察シリーズものの主人公という感じでした。

それなのに、あれはなに??
家族を裏切る行動にどれだけの理由があるかと思ったら、
それだけ?
たしかに本人には深い傷なのかもしれないけど、
なんか自己欺瞞と自己弁護のこじつけのような気がしてしまった(-_-;)

逆に、母親には同情しました。
決して現実に向き合わないショーべり警部の母親は、
かなりのイライラキャラだったけど、抱えていた秘密は重かった。
まあ、ああいう態度になるのも仕方ないかもしれません。

ペドラもちょっと極端よね。
短絡的というか、一応刑事なら身近なことでも慎重な判断をしてほしかった。
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「パパ、ママ、あたし」  カーリン・イェルハルドセン

ショーベリ警部シリーズ2作目。

この作品で起こる事件は独立したものだけど、
刑事たちが巻き込まれた事件は1作目から続いているので、
1作目の「お菓子の家」から読み始めることをお勧めします。


タイトルは、ちょっと意味がわかりにくいけど、原題は「Mamma,pappa,barn」で、
直訳は「ママ、パパ、子供」だそうです。

タイトル通り、メインテーマは親子の関係。
その関係が崩れた時に起こる悲劇のパターン。

子供が守られながら育つ場所であるべき家庭。
でも親が親の責任を果たせない人でなしだったら、
家庭こそが子どもにとって辛苦の場所になってしまう。

酒浸りの母、
育児放棄の母、
変質的性癖の父、
そんな親から逃げ出した子供は無防備なまま社会に放り出される。
そして彼らの無知や経験のなさを利用しようとする犯罪者が、
子供たちを待ち受けている。

シリーズ第1作の「お菓子の家」は
悲惨な話ではあっても動機などは特に珍しいものではなく、
その分、トリッキーなストーリー。

こちらは特別なトリックなどはなく事件の経過が描かれて、
小説的なテーマに重心が置かれている感じですね。
そしてこちらは被害者視点で描かれています。

刑事たち自身に関わる事件も進展というか、
より複雑になってきました。
しかしショーベリ警部の精神状態は大丈夫なのか~~??(゜o゜)

でも4歳って、自分の歳を言葉で言えると思うけど・・・
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「お菓子の家」 カーリン・イェルハルドセン

スウェーデンの警察小説「ショーベリ警視シリーズ」の1作目。

まず、北欧ミステリーなのに、ものすごく読みやすいところに驚き。
今まで読んだ北欧ミステリーは取っつきにくい作品ばかりだったけど、
この作品はストーリーもキャラクターもすんなり頭に入ってきました。

タイトルはほのぼのしてますが、当然「ヘンゼルとグレーテル」を思い出すので、
優しい話ではないのはわかります。

予想通りに、冒頭はすさまじいいじめシーンから始まります。
さらにそれをやっているのが幼稚園児ということが衝撃。

そこから時は過ぎて、38年後。
いじめを受けていた子供の一人は孤独な大人になり、
ある日偶然、自分をいじめていた男と出会う。
そして男は死体となって発見される。



警察小説なので、主人公は事件関係者ではなくて刑事たち。
事件の捜査と刑事たちの私生活が同じレベルで描かれているので、
最初はそこがちょっと邪魔くさいかも(^_^;)

でも、なかなか個性的な面々なので、だんだん興味がわいてきます。
ただ、長々とした中東情勢の解説は必要なのかわからない。

全体のトリックや解決はごくふつう。
でも最後まで読むと、また最初から読み返したくなりました。
詳しくは↓のネタバレで。

それにしても凄まじいいじめ。
桶に顔を浸けて押さえつけたり、
縄でぐるぐる巻きにして道路の真ん中に転がして車に轢かせようとしたり、
これを大人がやったら犯罪組織でしょ。
こんなことを幼稚園児がやったことが信じられないし、
だいたいドライバーもすごい迷惑だし、社会問題になりそうな気がするけど。

ここからネタバレなので反転させてください。

トーマスのことが頭にあるから犯人の発言は男の言葉として読んでいたけど、
女と知ってから読むとちゃんと女性の言葉に読めますね。

被害者がみんな、犯人に警戒感を持っていないことが不思議だったけど、
44歳の美しい女性なら納得。

突然家に入ってきた見知らぬ人間とふつうに会話してるリーセロット、
人里離れた農場にひとりきり、雨の夜、びしょ濡れの見知らぬ人間を家に入れたカリーナ・アホネン、
とても不自然さを感じたけど、そういうことだったわけですね。
娼婦であったアン・クリスティンとの会話も、注意深く書かれてますね。

最後に、カタリーナがそこまでに登場した誰かかと思ったら違ってた。
一瞬、看護婦のマギットがカタリーナかと思ってたんだけど。
そこが推理小説との違いですね。


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「ヴェサリウスの秘密」 ジョルディ・ヨブレギャット

スペインミステリーを読むのは人生はじめてかも。

16世紀の解剖学者アンドレアス・ヴェサリウスが書き残した精密な解剖図「人体構造論」。(ネットで見られます)
その「人体構造論」には未発表の第8巻があり、
そこには人体に関するある秘密が書き残されていた。



書籍に関する謎解きは大好きなので、紹介文を見てすぐ読んでみたのですが、
内容は実は冒険活劇でした。

舞台は1888年、万国博覧会を3週間後に控えたバルセロナ。
父親の葬儀のために帰郷した若き医学者ダニエル。
彼は地元紙の新聞記者から父親が実は殺されたのではないか、
そしてその死は最近バルセロナで起こった若い女性の連続バラバラ殺人事件に関係しているらしいと聞かされる。

万国博覧会開催の表と裏で、名誉と富、愛情など人の欲が絡み合ってドロドロ…
暗い石畳の街の深夜の追跡劇、あやしい娼婦街と黒幕の美女、
下水道に住みつく謎の集団、巨大迷路、暗号、男装の令嬢・・・
娯楽小説的要素をこれでもかというほど盛り込んだ大ロマン。

途中まで読み進むと、ある有名なゴシック小説を思いだしますが、
その他にもいろいろなゴシック小説が浮かんできました。

でもなにしろ元が解剖学の謎なので、バラバラ事件ばっかりで
そこが怖かった。
ただ19世紀ごろの大学の雰囲気は好きですけどね。

ラストで読後感がガラッと変わるところが面白かったです。

ネタバレだから反転させてください。
バラバラ殺人事件や狂気の医学実験などを次々に実践するマッドサイエンティスト。
その恐ろしい目的はなにか?と思ったら、
「愛する人を蘇らせたかった」とは。
まさかそんなメロドラマで終わるとは思わなかったので、意外性に驚いた。
冒険活劇が大メロドラマの印象になりました。

でもやっぱりフランケンシュタインを思い出しますね



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「緑のカプセルの謎」 ジョン・ディクスン・カー

これも懐かしい作品です。
今回新訳が出たので30年ぶりくらいに読んだんですが、
こんなわかりやすい話だったかな?
謎も整理されているし、ヒントも充分書き込まれているし、
とても明解な謎解きミステリーでした。

カーは、解決が独善的だとか整合性がないという評価が多いけど、
もしかして翻訳が悪かったんでしょうか??

複数の人間が注目していて、撮影もされているという状況で起こった毒殺事件。
謎の提示も面白い。




目撃証言の信頼性を検証する実験はご存知の方も多いでしょう。
事件の映像を見せたり、あるいはその場で事件を再現し、
その後、その場にいた人たちの証言を集めると、一致しないことが多いという実験。

それを個人で実験しようとしたのがマーカス・チェズニー。
彼は自宅に身内や友人を集めて寸劇を見せ、
その後、用意した質問に答えさせることで、
人間の記憶のあいまいさを証明しようとした。

しかし、その寸劇の中で本当に自分が殺されてしまうんですね。
彼が毒を飲まされたシーンは複数の人間が目撃し、
さらに映像にも記録されていた。

映像が残っているというのは、かなりワクワクしますよね。

で、ここから犯人を割り出すことになるのはエリオット警部とフェル博士。

被害者となったマーカスが用意していた10の質問。
それを事件のあと、あらためて目撃者に問うのだけれど、
これが見事に食い違っている。
・机に箱があったか? あったならばどのようなものが?
・フランス窓から入ってきた人物の身長は?
など、質問自体にもひっかけがあって、これだけでもかなり面白い。

さらにその食い違いを映像で確認。
このあたりは検証はとても面白いんだけど、見ている人間がうるさかった。
「ほら私が正しい」「いや違う」って大騒ぎ。
小学生じゃないんだから(笑)

でも隣の部屋にいる人間の身長、6フィートと5フィート9インチは、
はっきり見分けられるものなんでしょうか。
ということで調べてみました。

ネットの換算表で見ると、6feetは182.88cm、5feet9inchは175.26cm。
マリノスならマルティノスと天野純くらいの差かな。
これならたしかに見分けられるかも。
代表でいうと、本田と香川の差くらいですね。

ちょっと話がそれましたけど、記憶していた内容よりかなり面白かったです。

続きはネタバレ反転↓
【 
終盤の銃撃事件は本当に単純な事故ということらしいので、
ちょっと余計な気がしましたね。

あと、読唇術のあたりはちょっと都合がよすぎました。


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